精神科医のエリザベス・キューブラー・ロス氏は死に行く過程を
「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」の5段階に分類しました。
第一段階:「否認と孤立」
病などの理由で、自分の余命があと半年であるとか三か月であるなどと知り、それが事実であると分かって
いるが、あえて、死の運命の事実を拒否し否定する段階。
それは冗談でしょうとか、何かの間違いだという風に反論し、死の事実を否定するが、否定しきれない事実であることが
分かっているがゆえに、事実を拒否し否定し、事実を肯定している周囲から距離を置くことになる。
第二段階:「怒り」
現実を否定しようとして、否定しきれない事実、宿命だと自覚できたとき、「なぜ私が死なねばならないのか」という「死の根拠」を問いかける。
このとき、そのような根拠は当然、見つからない。
社会の役に立たない人が死ぬのは納得できる、
しかし、なぜ自分が死なねばならないのか、その問いの答えに対し、怒りを感じる。
第三段階:「取り引き」
死の事実性・根拠を尋ねて答えがないことに対し怒っても、結局、「死に行く定め」は変化させることができない。
死の宿命はどうしようもない、と認識するが、なお何かの救いがないかと模索する。
もう財産はいりませんから命だけを与えてください、
条件を付けて死を回避の可能性を探ったり、死の受容を考え、取引を試みる。
第四段階:「抑鬱」
以上の段階をへて、それらが無駄であることを知って患者はうつ状態におちいる。
病気が進行し、衰弱が進んで、無力感が深刻となる。
それとともに、この世との別れを覚悟するために、他人から癒されることのない絶対的な悲しみを経験しなければならない。
第五段階:「受容」
抑鬱のなかで、死は「無」であり「暗黒の虚無」だという今までの考えは、もしかして違っているのかもしれないという考えに出会うことがある。
あるいはそのような明確な考えでなくとも、死を恐怖し、拒否し、回避しようと必死であったが、しかし、死は何か別のことかも知れないという心境が訪れる。
人によって表現は異なるが、 死んで行くことは自然なことなのだという認識に達するとき、心にある平安が訪れ「死の受容」へと人は至る。