うつ病は、脳のエネルギーが欠乏した状態であり、それによって憂うつな気分やさまざまな意欲(食欲、睡眠欲、性欲など)の低下といった心理的症状が続くだけでなく、さまざまな身体的な自覚症状を伴うことも珍しくありません。
つまり、脳のエネルギーの欠乏により、脳というシステム全体のトラブルが生じてしまっている状態です。
私たちには自然治癒力という機能が備わっていて、通常はさまざまな不具合を回復へ導いてくれます。
私たちは日常生活の中で、時折憂うつな気分を味わいます。不快な出来事によって食欲が落ちることもあります。
しかし、脳のエネルギーが欠乏していなければ、自然治癒力によって、時間の経過とともに元気になるのが通常です。
時間の経過とともに改善しない、あるいは悪化する場合には生活への支障が大きくなり、「病気」としてとらえることになります。
そのため、仕事・家事・勉強など本来の社会的機能がうまく働かなくなり、また人との交際や趣味など日常生活全般にも支障を来すようになります。
(うつ病の原因)
うつ病を引き起こす原因はひとつではないということです。
非常につらい出来事が発症のきっかけになることが多いのですが、それ以前にいくつかのことが重なっていることも珍しくありません。
生活の中で起こるさまざまな要因が複雑に結びついて発症してしまうのです。
まず、最もきっかけとなりやすい「環境要因」ですが、大切な人(家族や親しい人)の死や離別、大切なものを失う(仕事や財産、健康なども含む)、人間関係のトラブル、家庭内のトラブル、職場や家庭での役割の変化(昇格、降格、結婚、妊娠など)などが要因となります。
「性格傾向」も発症要因のひとつです。「脳のエネルギーが欠乏した状態をうつ病と考えると、義務感が強く、仕事熱心、完璧主義、几帳面、凝り性、常に他人への配慮を重視し関係を保とうとする性格
の持ち主は、エネルギーの放出も多いということになります。
努力の成果が伴っているうちはエネルギーの回復もみられますが、成果が出せない状況が生じたり、エネルギーの枯渇が起これば発症の危険が高まります。
「遺伝的要因」、「慢性的な身体疾患」も発症要因のひとつです。
これらの要因によってうつ病を発症している時、脳の中は、脳内の神経細胞の情報伝達にトラブルが生じているという考え方で一致してきています。
脳の中では神経細胞から神経細胞へさまざまな情報が伝達されます。その伝達を担うのが「神経伝達物質」というものです。
なかでも「セロトニン」や「ノルアドレナリン」といわれるものは、人の感情に関する情報を伝達する物質であることが分かってきました。
前述のさまざまな要因によって、これらの物質の機能が低下し、情報の伝達がうまくいかなくなり、うつ病の状態が起きていると考えられています。
(うつ病の前兆)
@ 楽しみや喜びを感じない
通常なら楽しかったようなことでも、楽しみや喜びを感じなくなります。何をしていても憂うつな気分を感じてしまいます。
A 何か良いことが起きても喜べない。
きっかけとなった出来事や要因が解決したり、自分にとって良いことが起こっても、気分が晴れない状態が続いてしまいます。
B 趣味や好きなことが楽しめない
健康な状態であれば、嫌な気分のときに大好きな趣味することで、気分が晴れたりするものです。うつ病になっていると楽しめないどころか、疲労感ばかりが増してしまいます。
うつ病はこうした症状が2週間以上継続する状態をいいます。
自覚しやすい症状に注目するという考え方があります。
そもそも生命体にとって、たいへん大切なものがふたつあります。
ひとつは食べること。エネルギー補給です。そしてもうひとつが、エネルギー充電である睡眠です。「疲れているのに眠れない」となると、充電は底をつき自然治癒力が減少し不健康な方向へ進んでしまいます。
最近では、現在不眠がある人は不眠のない人に比べ、3年以内にうつ病を発症するリスクが4倍になるなど、不眠とうつ病の関連性を示す研究報告が多く、注目されています。
(うつ病の治療)
うつ病の治療には、「休養」、「薬物療法」、「精神療法・カウンセリング」という大きな3つの柱があります。
@ 休養
うつ病は脳のエネルギー欠乏によるものですので、使いすぎてしまった脳をしっかり休ませるということが治療の基本といえます。
生命体は、傷んだ部分をあまり使わないようにすることで回復していく力を持っています。
A 薬物療法
うつ病には、「抗うつ薬」という種類のくすりが有効であると考えられています。もともと自分が持っているセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が有効に機能するようサポートするのが、抗うつ剤の役割です。具体的には、もともと自分の脳内の神経細胞内にあるノルアドレナリンやセロトニンなどが、神経細胞と神経細胞の間で多くなるよう働きかけます。
B 精神療法・カウンセリング
「うつ病を引き起こす原因はひとつではない」ので、休養と薬物療法のみでは治療できません。抗うつ薬で環境要因は解決しませんし、ましてや性格傾向も変わりません。精神療法・カウンセリングは、主に再発予防という観点が中心となります。同じような状況の中で、うつ病が再燃・再発しないように、ご自身の思考パターン・行動パターンを見直すということになります。
精神療法・カウンセリングの中には「認知行動療法」、「来談者中心療法」、「精神分析療法」などさまざまな治療法がありますが、共通している点はご自身の中にある「生きる力」を見出す点です。
重要なこととして、精神療法・カウンセリングは心の専門家が一方的に行うものではなく、患者さんが専門家とともに考えていくという自主性が必須となります。
(うつ病のアフターケア)
治癒していく過程にはある程度の期間が必要になります。 治っていく経過も、良くなったり、悪くなったりという小さな波をもちながら、階段をゆっくりと1段ずつ上るように改善していきます。そして、うつ病の8割ほどはほとんど以前の元気が回復している状態=「寛解」状態を迎えることができるとされています。
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